季節は夏。舞台となるのは奈良県「いかるがの里」。世界文化遺産 法隆寺のある町です。
「遺影写真」を巡る、この一風変わったドキュメンタリーを作ったのは いかるがの里に暮らすお坊さん、横田丈実監督。監督が案内役となり、撮影・録音スタッフと共に七つの家族と個性豊かな遺影写真を訪ね歩きます。
訪問先のご家族が語られるのは、切なくて、ときに微笑ましい遺影写真にまつわる物語。
大切な人と暮らす方、大切な人を失われた方、すべての方に観てほしい「家族の想い」が詰まった作品です。
かつて並松商店街にあった自転車屋さん。少年時代の横田監督もパンク修理で幾度となくお世話になった、ちょっとコワモテなおじさんの遺影は、意外にも—。
岡本の村に暮らす川口さんのお宅には、立派に額装された戦没者の遺影がありました。若くして戦死された、ご主人のお兄さんが、靖国神社の写真や年表と共に収められています。
水田さんのお宅には、戦没者の遺影の隣にもう一人の兵隊さんの写真が。それは、戦争から無事に帰還し、農家を営みながら家族を支えてきた、水田さんのお父さんです。
法隆寺駅からほど近い服部に暮らす木村さん。
遺影の中のご主人は黒々とした角刈りですが、本当はちがっていたそう。なぜこの髪型になってしまったのでしょう。
自然豊かな白石畑。廣田さんのお宅で出会ったのは、珍しいパステル画の遺影。絵師による遺影とは少し趣が異なる、ほのぼのとしたタッチです。
五丁町に暮らす福田さんのおじいちゃんの遺影写真は、生前におばあちゃんと一緒に選ばれたという、とっておきの一枚。
なんと遺影を掲げる手伝いをすることになり。
平田さんは最愛の息子さんを亡くされました。
いつまでも高く掲げられないまま、目の前に置かれた遺影。
そこにあるのは母の想いです。
1966年奈良県斑鳩町生まれ。
20歳で自主制作した「その夏のどん」がデビュー作。龍谷大学文学部仏教学科在学中より本格的に映画製作を始め、「蝸牛庵の夜」(1992年・53分)が「ぴあフィルムフェスティバル」に入選。その後も斑鳩町のお寺、融通念佛宗浄念寺に暮らしながら映画製作を展開。
「FISH BOX 魚箱」「あかりの里」など作風は多岐にわたる。
2013年には死別の哀しみを真正面から描いた「加奈子のこと」を発表。
本作「遺影、夏空に近く」が15本目の作品となる。